
学級数が減る横須賀市の中学校
横須賀市立の中学校は、現在23校ある。本市では、過去に2007年に桜台中が、2011年に上の台中が他校に統合され既に2校が統廃合となっているが、その後はしばらく落ち着いていた。
しかし、久しぶりに生徒数と学級数の推移を確認したところ、岩戸中が学級数6を割り込んでいた。グラフにもしてみたので下に貼り付けておく。他の学校も、ほとんどが学級数は減少傾向だった。
この表の見方だが、日本の中学校は3学年制だ。そのため、タテ軸の目盛を3刻みにしてある。学級数6の学校は、つまり3学年×2クラス=6ということだ。逆に言えば、学級数5の学校は「1クラスしかない学年がある」ということになる。中学校は1クラス40人が基準だ。そのため、特別支援学級に所属する生徒を除き、普通学級に所属する生徒が学年40人に満たないと、クラス替え不可能ラインを割り込むこととなる。
小学校においては、こうした学校を小規模校と呼んできた。ところが、中学校の場合、教科担任制だ。学級数6では、1教科あたり教師1人しか配置できず、相談したりカバーしたりしながら授業を受け持つことができなくなる。このため、市教育委員会では学級数12未満を「小規模校」として扱っている。なお、私は本末転倒だと思うが、市では部活の担任を確保できなくなることも理由に挙げている。
→「横須賀市立小・中学校の適正規模及び適正配置に関する基本方針改定版」

小規模校と予備軍
小規模校は、かつて統廃合対象となっていた。現在では、実に11校(鷹取・坂本・不入斗・公郷・池上・馬堀・岩戸・野比・北下浦・長井・大楠)が小規模校であり、ほぼ半数となる。
もしも、全校を学級数12以上の適正規模校にするとすれば19校で足りる計算となり、4校を廃校にしなければならない。本当にそれでいいのだろうか?
とりわけ、最も危機的状況なのがクラス替えすらできなくなりつつある岩戸中だろう。そしてその予備軍が長井中・鷹取中・馬堀中だ。北下浦中と大楠中は2021年度からの学校選択制廃止によって息を吹き返したと見られる。逆に馬堀中は、学校選択制廃止によって今後生徒が減っていくと予想される。
では、これら4校を統廃合すればいいのだろうか?
私は、以前から公共施設の大幅リストラを主張してきた合理主義者で財政規律論者だ。しかし、学校は合理性で判断してはいけないと考えている。教育は、コストではなく教育効果で考えるべきだ。
では、教育効果のためにはどうすればいいのか?
学校選択制を一部復活して少人数教育の実現を
2005年から導入してきた学校選択制が本年度2021年度入学から廃止になった。私は、小中一貫教育をうたうのであれば学校選択制は矛盾するため、以前から廃止すべきだと主張してきた。そして、実際に廃止された。
→「中学校の『選択制』中止へ」タウンニュース横須賀版2018年1月26日号
しかし、現実的に岩戸中のような学校が出てきて、考え方を修正した。これまでのような大規模な学校選択制は復活させるべきではないが、少人数教育の実現のために用いてはどうかと思うのだ。
先に述べたように、中学校は1クラス40人が基準だ。つまり、1学年の普通学級生徒数が40人だと1クラス、80人だと40人+40人の2クラスということになる。ここに、学校選択制で1人受け入れるとどうなるか? 学年40人から41人となれば、その学年は21人+20人の2クラスとなる。学年80人から81人となれば、その学年は27人+27人+27人の3クラスとなる。つまり、少人数教育が実現するのだ。少人数学級・少人数教育の効果は、ここに繰り返す必要もないだろう。
こうした調整のため、学校選択制を限定的に使ってはどうか。
たとえば、現在の岩戸中の2年生は38名の1クラスとなっている。そして、久里浜中の2年生は39人×3と38人×4の7クラスとなっている(計算上なので若干の変動もありうる)。もしも、入学時に久里浜中から岩戸中に4名移っていれば、岩戸中は21人+21人の2クラスとなっていた。
あるいは、現在の馬堀中の1年生は32人×2の2クラスであり、隣の浦賀中は37人×2と36人×4の6クラスとなる。もしも、浦賀中から17人が馬堀中に移っていれば、馬堀中は27人×3の3クラスとなり、浦賀中は35人×6の6クラスとなっていた。
もちろん、生徒が希望した場合の話で無理に越境させようという話ではない。ただし、距離的に中間にいる生徒が、少人数教育が受けられるのであればと学校選択制に応じることはあり得る話だ。このような少人数教育実現の手段として、片道で枠を設けたうえでの学校選択制の一部復活はむしろ推奨するべきなのではないだろうか。
同様の考え方として、市の基本方針でも「特別認定校制度」の導入を検討していた。小規模校には、特色を持たせ、市内全域から生徒を受け入れるという方向性だ。岩戸中・長井中・鷹取中には、まさにこれを適用したほうがいい段階に入っているのではないか。
※1/20追記:冷静に考えれば、岩戸中だけを見れば、粟田小学区を全て岩戸中にすることがシンプルな解であり、小中一貫教育の観点からも望ましいだろう。その場合、今後は野比中をどうするかは別に考えなければならない。
市民的な議論を
今後、中学校の再編をどうすべきか?
学校選択制を廃止した背景には、「地域で育てた子供たちが隣の地域の学校に行ってしまうのは寂しい」という地元の声もあった。もちろん、小学校と比べれば中学校は地域との関わりが薄い面はある。とはいえ今後、横須賀市の学校はコミュニティスクールへ移行する予定であり、地域の中で育む視点は重要だ。
一方で、教師がチームとして仕事をしていくためには、中学校には一定の規模が必要だ。各教科の教師が複数いれば、様々なカバーをしやすい。
部活動も、一定の人数がいたほうがいい。過去記事「横須賀市の中学校の部活の分析」でお伝えしたように、野球やサッカーのチームが組めない学校が増えている。ただし、これは学校の統廃合をしなくてもクラブチーム化で解消できるため、整理が必要だ。
もっと議論されるべきテーマだと考える。みなさまから、ご意見頂ければ幸いです。
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