【委員会視察報告】中編:横須賀市には若者支援など要らない⁉

 初日の11月8日(火)は、東京都世田谷区へ伺い、「若者政策について」という主題で、「希望丘青少年交流センター」という施設を見ながら説明を頂いた。



 本市の議会局による概要説明は次のとおりだ。



 世田谷区では平成25年に若者支援担当課(現子ども・若者支援課R03年から)を創設し、中高生から39歳までの若者を支援の対象としている。その理由として、中高生、大学生、あるいは社会人の若者たちについて行政との接点が薄いことをあげている。出産のときから小中学校までは比較的、行政との関係はあるが、高校以降は直接のつながりができない時期が長く続き、20代も含めてその間空白ができる。その一方、平成20年のリーマンショック以降、就職などにおいて若者は苦しい状況に陥っている。その支援を行うため、中高生、大学生、あるいは社会人という若者の表現の場所、活動の場所を作り行政とのつながりを作るという政策を行っている。  世田谷区では若者支援として以下の事業を実施している。子ども・若者支援の政策は、現区長の1期目からの政策であり、東京23区の中でも先進的な取り組みを行っている。
・引きこもり支援…メルクマールせたがやなどの施設を運営し、支援を行っている。
・児童養護施設等を巣立つ若者の支援…平成28年度に児童相談所を開設し、その支援に力を入れている。
・居場所(アップス・たからばこ・あいりす等)…たからばこ・あいりすは大学と協定を結び、大学、学生を運営主体としている。(たからばこ=日本大学、あいりす=昭和女子大学)
・Cheer!わかものライフガイド…区の若者政策や事業サービスを冊子にまとめる
・若者支援シンポジウム…支援者団体のネットワークづくり、若者とのつながりを作るため平成25年度より実施。
・「ねつせた!」若者による情報発信プロジェクト…平成28年より開始。子ども・青少年協議会におけるモデル事業として始まる。若者を主体としメンバーを入れ替えつつ、継続している。現在9期目のメンバーが実施中。




 私の考えでは、本市に欠けている若者政策は大きく3つある。



      1.居場所・サードプレイス



      2.社会参画/市民参加



      3.公民教育



 この3つは、必ずしも別々ではなく関連し合っており、今回視察した世田谷区の施設のように一つの施設で3つの事業目的のいずれも満たせる事業もあるだろう。



●1.居場所・サードプレイス



 この観点では、過去に視察した施設で言うと「武蔵野プレイス」の地下2階のティーンズスタジオ(20歳以上は出禁)や、「パピオス明石」5F、新城市の駅前施設を高校生のアイディアでリノベーションした施設などが該当する。今回の世田谷区「希望丘青少年交流センター」を含め、横須賀市にはないものの必要な機能だと感じた。少なくとも誰かのように「うちのまちには、必要なし!」と切り捨てるようなことじゃないだろう。



 とりわけ、中高生ほど「第三の場所」が重要な意味を持つ世代もない。小学生ぐらいまでは大人が与えたお仕着せの場所でもまだ満足できる。だが、十代ともなれば大人の干渉を受けず、しかし安全で心理的安全性も保たれ、安価に、自主管理で過ごせる場所の中で、社会性や自分の特性に気付いて成長していくものだ。私が田舎町の高校生だった頃は、周囲に家もない広い公園で夜にギターや太鼓を持ち寄って友達とタバコ吸ったり酒飲んだりして駄弁っていたものだが、横須賀市のような都会にはそんな「隙間の場所」はなかなかない。酒やタバコが憚られるような健全な空間で、自由にバンドやったりダンスやったり創作したり何もしなかったりできれば、面白い大人に育つと思う。



●2.社会参画/市民参加



 この観点では、過去に私は岐阜県可児市議会による高校生向けの「地域課題検討会」と、愛知県新城市長による「若者議会」の取り組みについて視察に伺ったことがある。私は視察したことがないが、鯖江市長による「JK課」の取り組みと並んで、この3件は日本で最も有名であり、実績も出し、評価を受けている取り組みと言っていいだろう。



 ただし、この3件とも「選ばれた人向け」の若者の社会参画政策である。可児市議会であれば市内に所在する高校の生徒のみで、他市の高校に通う生徒は対象ではない。新城市と鯖江市の取り組みは、いずれも手を挙げて選ばれた高校生や若者が対象となっている。もちろん、彼らの提言や活動によって生み出されたサービスの恩恵は市内在住・在学の他の若者にも及ぶし、一定の「あー、若者でも声挙げれば色々変えられるんだ!」感は伝播するかもしれないが、それは限定的だろう。やはり、市内の全ての若者を対象とした一般的な事業として社会参画/市民参加の機会を創るとすれば、第一には生徒会における学生自治だし、他には若者向けの施設の自主管理、イベントの自主制作などではないか。



 このあたりの感覚は、いかに「子どもの権利を守る条例」をつくったところで、ロジャー・ハート氏の「参画のはしご」(The Ladder of Participation)を登れないのが横須賀市かもしれない。



 本市においては、中学校がガンだ。中学校教師の質が悪い。過去に中学校が荒れた時代があったらしく、その時に管理的な文化が染みついたようだ。私なんかは、田舎の管理的な公立中学校で成績は学年一番だったが、校則等を笠に着て教師が抑圧してくるから反発して毎日のように殴られていた。思春期というのはそういう側面がある。管理するから反発するのだ。制服を押し付けるから、短ランやボンタンを着るわけだ。古いけど。その時代の空気を、横須賀市は今も引きずっている。時代は我々の昭和から既に平成を経て令和になったのに、教師の脳味噌がアップデートされていないようだ。というか、教師と一括りにするのは失礼な話で、運動部活動の指導が大好きな中体連の中心メンバーと彼らによって牛耳られた校長会の頭まで筋肉になった仲間意識が、おそらくは本市の「子どもの参画」の足を引っ張っている。「小林に何がわかるのか?」と言われるかもしれないが、私は過去3回の「へんな校則ランキング」を通して、学校からの苦情を受けたり前近代的で人権無視の校則を実際に読み込んだりしているので、見えてくるものがある。



 この方々に、徹底的に人権教育を施すことが本市における根治治療だろう。しかし、変化には時間がかかる。だからこそ、「武蔵野プレイス」や今回の世田谷区「希望丘青少年交流センター」のような施設の自主管理の機会を市長部局で提供することが一つの突破口になると思われる。



 世田谷区の施設の受託者は民間事業者で、説明してくれた責任者の方は元は青山の「こどもの城」の管理者として務めた方だそうだ。質疑応答や道すがらの説明を聞いていても、このあたりの感覚はきっちりお持ちであることが伺えた。市役所はどうしても管理的になりがちなので、若者政策の分野では民間連携は重要だし、その際にはこういうモノのわかった方々に依頼することが重要だと感じた。



●3.公民教育



 この観点では、長野県松本工業高等学校が、活きた公民の授業に力を入れて評価されている。授業の中で、高校生が自分たちの要望を陳情として書き出し、議会に提案してそれが通ったことは全国的に有名だ。おそらく全国初となる小学生からの陳情をはねつけてしまった横須賀市議会とは大違いで松本市議会は懐が広いようであり、その辺りも高校生に成功体験感を与えたであろうことは想像に難くない。



 ただし、このような授業としての公民教育以外にも、可児市議会や新城市のように若者の社会参加を促し、若者の声で実際にまちの施設やルールを変更していくこともまた、活きた公民教育たり得ると思われる。



 本市は、どちらもできていない。だったら、両にらみでやるべきだと思う。



●若者の「福祉」をどうするか?



 さて、本市に欠けているものとして以上3つの分野を挙げた。違う視点として、本市に欠けているわけではないが世田谷区とは対応方法が違うものが、(狭義の)福祉だ。つまり、困っている若者への福祉サービスである。見ていると、世田谷区の若者政策には福祉の視点を強く感じる。



 かつて一億総中流と言われた頃は、若者はそんなに困っていなかった。というより、若者の困窮はそれほど可視化されてこなかった。ところが、日本の没落と格差社会の進展によって、大人の貧困がかなり可視化され、近年ではシングルマザーや子どもの貧困が可視化されるようになってきた。そして、若者の困窮が徐々に取り上げられるようになってきた。また、かつては「普通はこういうもの」という共同幻想があったので、誰も彼もがそれに合わせようとしたが、今は多様性の時代となって差異も顕在化してきた。格差社会と表裏一体かもしれない。引きこもり、ワーキングプア、ブラックバイト、奨学金という名の教育ローン、体験や教育機会の格差など様々な困窮が複合的に若者たちを取り巻いている。



 この問題については、私には迷いがある。生活福祉・高齢者福祉・障害福祉・児童福祉等と同様に「若者福祉」という分野を立てて世田谷区のように対応すべきだろうか? あるいは、個々のケースに応じて既存の福祉分野に当てはめ、親からの暴力であれば児童福祉、進学費用の工面の問題であれば生活福祉、という対応のままでいいだろうか?



 いずれにしても、対応する体制のあり方については後回しでいいのではないか。まず必要なのは、実際には困っているのに声を挙げることができずにいる若者へのアウトリーチだと思う。世田谷区の各種施設においても、普通に「第三の場所」として来ている若者との何気ない会話の中から抱えている問題に気付くことが多いようだ。



 「1.居場所・サードプレイス」の中で若者の声を拾い、「2.社会参画/市民参加」の過程で若者に声を挙げることを伝え、「3.公民教育」を通して福祉社会である日本の仕組みを教えること。これが、近道なき若者へのアウトリーチではないかと今は考えている。

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