【委員会視察報告】後編:歩ける街づくりと所有者不明土地への対応

11月9日(水)長崎県長崎市 まちぶらプロジェクトについて



 長崎市には、「まちぶらプロジェクトについて」という主題で、実際に長崎のまちをブラブラ歩きながらご説明を頂いた。



 なお、長崎市としては「まちぶらプロジェクト」を都市計画・交通・観光・商業を含めた複合的政策として実施しているそうだが、我々は今回、観光政策の観点からの視察としたとのこと。「とのこと」と言ったのは、自分が希望したわけではなく、前述の通り正副委員長に一任したからだ。



 本市の議会局による概要説明は次のとおりだ。



 長崎市は ①西九州新幹線の開業(本年9月23日)、 ②長崎駅の整備(駅舎の完成は2020年3月28日、全面開業は2023年秋予定) ③大規模MICE会場のオープン(出島メッセ長崎2021年11月) ④新市庁舎の供用開始(2023年1月4日予定) があり、「100年にいちどの長崎」と題して変化の時を迎えている。  それらの動きの中でこの「まちぶらプロジェクト」は、長崎駅周辺が「陸の玄関口」として、国際船受け入れ拡大に伴い長崎港松が枝周辺が「海の玄関口」として、さらなる発展が見込まれる中で、それぞれの活性化だけではなく歴史的な文化や伝統に培われた長崎の中心部である「まちなか」を計画的に賑わいの再生を図るものである。  それぞれがバラバラの活性化をはかるのではなく、「まちなかの軸」を設定し、軸を中心とした5つのエリアにおいて整備を進めている。また、行政によるハード整備だけでなく、「まちぶらプロジェクト認定事業」等を用いて、地域力によるまちづくりも核とし、ソフト施策も進めている。




●何のために視察に来たのか最後までわかりませんでした。



 正直に告白するが、事前に上記の概要説明を読んでも実際にお邪魔してお話を伺っても、何のために視察に伺ったのか、よくわからなかった。やはり、視察先の選定において議員間討議をしてこなかったので「本市の何の参考とするために何をどんな視点で視察するのか?」という意図が絞れなかった。



 観光の観点の視察ということは、本市の近代史を軸としたルートミュージアムの参考にしようという話だったのだろうか? しかし、ルートミュージアムとはだいぶ毛色が違う。お話を伺っていると、むしろ都市計画的な都市軸に問題意識があるようだった。そもそも「まちぶらプロジェクト」の副題は「長崎市中心市街地活性化基本計画」だ。



●中心市街地の衰退の問題ではないか?



 私の見立てではこうだ。長崎市も、交通結節点である駅と中心市街地が離れているタイプの街だ。長崎駅から中心と思われる南側の出島や新地までは歩いて20分はかかる。この他に、港町なので長崎港も交通結節点となるが、そちらは出島や新地のさらに南側でやはり歩いて20分はかかる。こうした中で、長崎駅前と長崎港の周辺は一定の再開発がなされる予定であり、中心市街地がかなり打撃を受けることが予想されるのだろう。よくある話だ。



 近隣だと横浜市が同様の問題に頭を悩ませてきた。中心市街地だった関内と東海道線敷設の都合でかなり北側に設置された横浜駅に分かれてしまった都市軸をつなげようとして、みなとみらいの開発・市営地下鉄の敷設・LRTの検討→連結バスの運行といった施策を打ってきた。とはいえ、横浜は今なお大いに発展しているので、関内が横浜駅のせいで寂れるほどのことはなかった。関内・横浜駅・みなとみらいが交通結節点強化もされて、それぞれの個性を持った栄えかたをして、万々歳なのではないか。



 さて、長崎市だが、歩いて回れるまちにしようと考えているようだが、ちょっと距離が離れすぎているのではないか? もちろん、長崎市だって一度に計画地全体を歩いてもらおうという話ではない。拠点間の移動を歩きでも楽に楽しくできるようにすることで回遊性を高めようとしているのだろう。そのために、案内表示・休憩場所・トイレなどを整備し、目で楽しむソフト面の工夫もしているわけだ。これらは大事なことだと思う。だが、併せて公共交通も調整したほうがいいだろう。幸い、長崎市には路面電車がある。市との資本関係はないようだが、上下分離などで市がインフラ整備をすることで政策誘導することはできるだろう。







 まず、長崎駅と路面電車駅の距離が遠すぎる。岡山駅のように乗り入れないとダメだろう。また、長崎港もつなげたほうがいい。そして、この2カ所と中心市街地は富山市を参考に環状線化を検討してもいいのではないか。このあたりは、長崎市も既にお考えのことかもしれない。



●横須賀市も、やはり公共交通を考えたほうがいいのではないか?



 というわけで、都市軸の話は都市計画の地図の上に太い線を書き込むだけでは実現しない。ハードの道路・鉄道とソフトの公共交通をきちんと整備しないと画に描いた餅になると思う。また、長崎市に伺って、案内表示・休憩場所・トイレなどの設備も重要なことに気付かされた。



 そして、本市ではどうだろうか? 平成町を埋め立て、元の予定と違って工場ではなくマンションや商業施設を立地したが、おかげですっかり郊外型のまちになってしまった。また、汐入・横須賀駅と横須賀中央駅と小川町が離れていて、この回遊性も乏しい。この点については、私はポートマーケットを結ぶバスを無償の循環バスに転換したほうがいいと考えてきたし、あるいは路面電車を走らせてもいいと考えてきた。なお、これらの公共交通整備で観光面でもルートミュージアムの移動手段の問題も大きく解消できる。ちなみに、マボチョクの1万メートル・プロムナードへのアートやトイレの整備事業については、あそこは別に拠点と拠点を結ぶ軸という話ではないので、今回のとは文脈が違うと思う。



 総務常任委員会ではなく都市整備常任委員会で視察に伺ったほうが良かった案件だと思うが、以上が私の所感だ。観光政策という元々の視察の狙いとは大きく外れるが、より長崎市の取り組みを本市に引き付けて学んだとは思っている。



11月10日(木)山口県山口市 中心商店街における地域福利増進事業



 山口市には「中心商店街における地域福利増進事業」という主題で、市役所にてご説明を頂いた。



 本市の議会局による概要説明は次のとおりだ。



 山口市では、中心商店街における整備事業において、所有者不明土地の有効活用が課題となっており、平成30年に成立した「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の活用を含め、その解決に取り組んでいる。又、国土交通省の「所有者不明土地法の円滑な運用に向けた先進事例構築推進調査」に令和2年度採択され、その事例を共有している。 ○所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について ・所有者不明土地の増加に伴い、公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への大きな支障となっていることを背景として立法。 ①これまで利用できなかった所有者がわからない土地を地域のための事業(地域福利増進事業)に利用できるようにするもの。 ②所有者の探索において、市町村長等に土地所有者に関する情報(住民票、固定資産課税台帳等の情報)の提供を請求することができる。 ③都道府県知事の裁定を受けることで、期限を設けて所有者不明土地を使用できる。 ・令和4年の改正によって、対象事業に災害対策関連施設や再生エネルギー施設の整備に関する事業を追加、また災害発生防止のため、市町村長等による代執行制度等を創設している。 ○事業概要  山口市では、平成25年に住宅市街地総合整備事業を進める中で、所有者不明土地の存在が判明、同法の地域福利増進事業の活用検討を開始している。同法に基づく調査により、法定相続人を把握している。把握した法定相続人に対し、土地所有者であることの確認作業を行い、その結果、全員の所在が明らかとなり、地域福利増進事業における所有者不明土地には該当しないことが明らかになった。  現在、権原100%取得をするため、法定相続人に対し、寄付依頼を行っている。また持ち分過半数以上取得したタイミングで共有物の「管理」として施工するか、権原を100%取得後に行うか検討を行っている。




●土地は誰のものか?



 このテーマは、「土地は誰のものか?」ということに行きつくのかもしれない。これが共産主義陣営ならば土地は国のものだが、日本のような資本主義陣営は私有財産制なので、土地は所有者のものである。



 しかし、完全にアナーキーにしてしまうと「万人の万人に対する闘争」となってしまうので、一定の政府の関与は必要だ。だから、土地には用途地域などで様々な利用制限を付けている。加えて、土地には固定資産税や相続税などをかけ、土地の寡占や死蔵が起こらない工夫もしているわけだ。また、道路や公園のような共有地も設けている。共有地には、国有地や市有地のほか、地域の人々の入会地もある。



 ところで、土地の所有者が亡くなると、その親族が法定相続人になるが、誰が相続するかを決めて土地を登記し直すことをやらないまま放置されると法定相続人はネズミ算的に増えていく。こうなると、その増え続けるネズミたちを追いかけるには時間もコストもかかるため、価値の低い「負動産」は放置されてどうにもならなくなる。ただし、市街地の一等地などであれば時間やコストをかけてでも所有者を明らかにして土地を活用する価値がある。



 ところで、土地は私有財産であると言っても、やはり公共財の側面も大きい。まちの中心部の土地を放置されるとみんなが迷惑する。そこで、今回の所有者不明土地法の改正などが講じられた。とまあ、こういうわけだろう。そして、「所有者がわからない私有地であっても、都道府県がちゃんとチェックしたうえで10年限定でみんなに役立つことに使うのはOKにしようね」という「地域福利増進事業」という枠組みが生まれたらしい。



 で、山口市は中心市街地の所有者不明土地をこの「地域福利増進事業」で活用しようとした。手始めに、所有者を調べたところ優秀な職員が全ての所有者を突き止めてしまったので、もはや所有者不明土地ではなくなり「地域福利増進事業」には該当しないことになった、というのが今回のオチだ。



●外部委託ではなく内製化が安いのではないか



 では、今回の視察はムダだったのだろうか? 私はそうは思わない。私が得た洞察は次のようなものだ。



 法定相続人を追いかけるために弁護士や司法書士に依頼をすると高くつく。山口市では基本的に市職員が辿ったらしい。もちろん、市職員も時間がかかって人件費はかさむが、知見を重ねれば専門性と能率は上がっていくはずだ。



 ちなみに、本市ではどうしているのかを、必ず毎年賦課している固定資産税の担当である資産税課に聞いた。死亡などで所有者が変わった場合には、本市でも市職員がすぐ追いかけているとのこと。こうして普段から処理しているおかげで、横須賀市内には所有者が存在せず固定資産税を課税できない「課税保留」のケースは12月現在で200件未満らしい。



 こうやって所有者不明土地を生まない未然防止の努力を重ねたうえで、それでも発生してしまった場合にも、市役所内部の弁護士などを活用すれば外部委託するより安くつく。市役所であれば、住民基本台帳システムや固定資産課税台帳システムも使える。職権も与えられている。



 今回の視察の最大の持ち帰りは所有者不明土地の調査の「内製化」だと考えている。

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