公開質問状への回答書
公開質問状への回答書(2025/9/23)
各種報道もなされているとおり、2025年9月17日に真鶴町教育委員4名から公開質問状を受け取りました。公開で問われましたので、ここに回答致します。
- 公開質問状20250917
- 公開回答書20250923
以下は、公開回答書と同内容です。
公開質問状への回答書
2025年9月23日
公開質問状への回答書
真鶴町教育委員
瀧本朝光殿
松野 司殿
岡田和枝殿
髙橋 綾殿
真鶴町長 小林伸行
前提のご説明
日頃より真鶴町の行政執行を、教育行政の分野で共に担って頂いておりますこと、感謝申し上げます。
さて、2025年9月17日に受け取りました公開質問状へは下部に逐条でご回答申し上げます。ただし、今回の手法についてはいくつか不適切と思われる点があります。案件の性質上、ご回答の前提となる事項についても丁寧にご説明しておくことが重要だと考えるため、ご回答に先立って以下3点を申し上げておきます。
- 第一に、本来は町民のために設けている町長室開放日の時間内16:45に、瀧本氏と松野氏の2名が予定を入れてお越しになりました。おかげで、前の方の話が盛り上がって少し時間が押して16:33からとなった町民の方との話が、もう少しお話したかったのに尻切れトンボになってしまいました。17:00には町長室開放日が終了するとわかっているわけですから、何故あと15分遅らせなかったのか。自分たちの都合を優先させて、町民との時間に割り込んできたお二方の判断は不適切だと感じています。
- 第二に、瀧本氏と松野氏の2名が予告なく4社の報道機関を引き連れておいでになりました。私は疑問には当然ながら答えるべきだと考えていますし、私には説明責任があります。しかし無用に対立的に見えるような形で演出した今回のやり方は、実際には回答そのものを求めているのではなく、抗議のようにも見えますし、町民に対して「教育委員は町長に不信を抱いている」と印象付ける効果を狙ったように見えてしまいます。二年前、私は「対立より対話を。」と掲げて信を頂きました。就任後、対話を重視した町政運営をしてきており、総合計画の改訂、今回の町長室開放日や、株主ミーティング、公共施設再編の町民対話会など、対話型の町政運営の姿勢は評価されてきたと自負しています。教育委員会もまた、学校建設にあたって様々な対話の場を設けてこられて、私は素晴らしいことだと感じてきました。しかるに、今回のように対話によらず一方的な印象操作を図るような見え方をしてしまっては、混乱した町政を一緒に建て直そうという姿勢を町民のみなさまに感じてもらえないのではないでしょうか。教育委員のみなさまは、外部の審議会委員ではなく私と同じ執行機関となります。内部の行政経営者としての意識を、もう少し持って頂ければ嬉しく存じます。
- 第三に、今回は公開質問状ですので、ご回答も公開で行うこととなります。その際、今回の質問内容は教育長の評価に関わるものを含んでいます。その質問への回答を求められている以上、「町長は教育長に対し否定的なのだ」と受け止められかねない評価が公開されることは避けられません。これは、現教育長に対しても失礼ですし、今後の人事案件において、人物の評価を公の場で語ってしまうような町には就任を遠慮被る方も出てくると考えられます。ご質問があるのであれば、普段から私に対して質問を投げかけて回答を得ればよかったのではないでしょうか。このように、いきなり最後通牒のような形で公開質問状とすることで、現教育長や将来の特別職等に影響を及ぼしかねない手法は、いささか配慮に欠けるように感じます。
以上、僭越ながら3点にわたって苦言めいた前提を申し上げました。
それでは、以下ご回答を逐条にて申し上げます。
ご回答
質問事項1
「まなづくるタイムスvol.3」において、ご自身の公約の一つである「中学校給食を早期導入します!」が実現できない理由として、「本件については、予想に反して教育長の協力が得られませんでした。(法律上、教育分野は私が直接指示することができない仕組みとなっています。)なお、前町長時代に選ばれた教育長ですから、私の方針と異なっても彼が悪いわけではありません。考えが違うだけです。2025年11月の任期満了後に新しい教育長を選任し、導入に向けて動きます。」と記載があります。教育委員会は、真鶴町に置かれる合議制の執行機関であることから、私たちは「(町長が書かれた)教育長の考え」は教育委員会の考えであると捉えたうえで、質問をします。
【質問①】
(町長が書かれた)「中学校給食を早期導入します!」「新しい教育長を選任し、導入に向けて動きます。」からは、現在進めている「義務教育学校建設に伴う来年度9月からの小学校校舎においての中学生への給食実施」を待たずして、他の方法での中学校給食を実施するお考えと受け取れます。具体的な実施方法と時期を教えてください。
→私が同公約を作成した2023年10月時点では、中学生がいったん小学校に移る2026年9月は3年後でした。
「木を見て森を見ず」という格言がありますが、私はこと教育においては「森を見て木を見ず」ではいけないと考えてきました。町の教育全体や学校全体を考えるのは当然のこととして、一人ひとりの児童生徒のことを考えなければならないと思うのです。
この観点からは、3年後まで給食がないとなると、その間に今いる生徒は給食がないまま卒業していってしまいますので、当然ながら早く給食が提供できるに越したことはありません。
そのため、親子方式を軸としつつも小学校が工場扱いとなることから「ただし書き」の許可を得るには時間を要する予測に鑑み、他の方法も同時に模索したいと考えました。他の自治体の給食センターから食缶にて提供を受ける方式については、教育長が打診して下さり、条件さえ整えば供給可能だとの回答を引き出して頂きました。同時に、民間の事業者から弁当にて配食を受ける方法も探りました。
【質問②】
(町長が書かれた)「中学校給食の早期実施については、教育長の協力が得られませんでした」について、具体的にどのような協力が得られなかったのかを教えてください。
→上記のように検討を重ねてきましたが、教育長の「基本的に給食は2026年9月からで良い」という姿勢は変わりませんでした。
そこで、「それでは、せめて当事者である生徒や保護者の意向だけでも探りたいので、アンケートを実施したい」と教育長に協力を求めました。ところが、教育長は「保護者にアンケートをとれば、給食を導入してほしいと言うに決まっている。教育現場は短期間で対応しなければいけない。基本的に給食は2026年9月からで良いと考えている。そのため、そのような内容のアンケートには協力できない」旨の回答で、断られてしまいました。
「アンケートすら協力してくれないのか……」と当時は大変に悔しく思いました。教育委員会の協力が得られなければ中学校給食は導入できませんので、公約を断念しました。
なお、「早期の中学校給食導入に協力が得られなかったから、教育長を再任しないと決めた」というわけではありません。私は教育長を再任しないことを、別な理由から就任1年目から考えていました。私の町政報告チラシを改めて読み返して頂ければ、因果関係として記載してはいないことを確認できるかと存じます。
「元々考えていた教育長の任期満了以降に、教育委員会の計画通りの時期に中学校給食を導入する考えである」という言い方をすればより明示的であったとは存じます。しかし、むしろ「単純に町長の公約達成に協力しなかったから教育長を再任しないのだ」と読めたほうが、教育長の人物評価に傷をつけないだろうと私は考えたのです。ただし、そのように匂わせたことが、余計な誤解を招く結果となりました。
私が、現教育長を再任しない判断をした理由を明示します。大きく3点です。
- 第一に、「子どもを第一に考える」かどうかです。この間、子どもよりも学校現場を優先しているのではないかと疑われる場面を何度か見かけました。彼の名誉のために詳述は控えますが、いかに人格者であり子どもの朝の通学の見守りを暑い日も寒い日も欠かさないような熱心な方であっても、そこが揺らいではならないと考えました。良い人は、全方位に優しくしてしまうのです。子どものためには鬼にもならねばならない。私はそう考えます。
- 第二に、速さの違いです。仮に、子どもに暴言を吐くような教員がいたとすれば、一刻も早く子どもの前に立たせないようにすべきだと私は考えます。しかし、「今学期が終わってから」「今年度が終わってから」などと言っていては、その間、子どもたちはおびえながら過ごさなければなりません。介入には、必要な速さがあります。実例は詳述すべきではないため喩え話としましたが、教育長と私との間に教育観で大きな違いはないものの、どの程度速く行うべきかという違いはありました。
- 第三に、教育移住を増やす必要です。仮の話で恐縮ですが、もし尾木ママが真鶴町の教育長に就任すれば全国から注目を集め、「真鶴の教育は変わる!」と思って頂けるでしょう。もちろん彼を迎えることは難しいのですが、全国には名のある教育長を迎えることで教育移住が進んでいるまちがあります。一般の方が知らなくても、教育に意識と感度の高い保護者なら知っている、という教育者はたくさんいます。人口減少にあえぐ真鶴町では、新しい学校の建設を機に北海道安平町や長野県佐久穂町のように教育移住を増やす必要があると考えています。そのためにも、耳目を集めるような教育長を迎えたいと考えています。なお、私には既に意中の方がおります。
質問事項2
8月21日付け朝日新聞に、「従来型ではない先端的な教育を導入する人を選任したい。」との記事が掲載されています。また、9月1日付け毎日新聞には、新しい学校に設置する図書館の在り方について教育長と意見が合わなかったとした上で、「これからの教育は変わるのにこれまで通りのイメージでは困る」の記事が掲載されています。これらの記事から、真鶴町の教育行政を推進する立場から質問します。
町長のお考えになる、「先端的な教育」と「従来型の教育」について、どのような教育として捉えているのか、ソフト面(教育内容)・ハード面(施設面等)の両面から具体例を挙げて教えてください。
→私の考える「先端的な教育」とは、映画『夢みる小学校』や『夢みる校長先生』に登場する学校群のような、児童生徒の主体性や探求を重視した「21世紀型スキル」を育むような教育です。
一方、「従来型の教育」とは、かつての真鶴中学校をはじめとする理不尽な校則で生徒を縛り付けることに疑問も抱かず校則の改訂条項もなかったような学校の運用であり、学びの個別最適化を文部科学省からも求められているにもかかわらず未だに一斉授業を続けているような教育です。
実は、ハード面・施設面も重要ではありますが、それ以前の問題として教員の学び直しの機会と時間が不足していることに大きな要因があると考えています。
質問事項3
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」では、「教育委員会の所管する学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止に関すること」、「学校給食に関すること」について、教育委員会の職務権限として規定されています。しかし、町長は、これまで、中川一政美術館、まなづる図書館、町民センターに関する施設のあり方等について、教育委員会との協議を経ずに公言されています。そこで質問をします。
教育の政治的な中立、継続性・安定性の確保が求められる中、教育委員会との関係(協議・調整)をどのように考えられているのかを教えてください。
→教育の政治的な中立性の確保とは、古今東西、政治家が「進化論を教えるな」「慰安婦のことを教科書に書くな」「国旗を掲揚せよ」「君が代を歌え」等と教育に介入してきた事実から求められるようになったものだと認識しています。近年では歴史教科書問題をはじめとして、この原則が侵されようとしています。私はそのことを深く憂慮する者の一人でもあります。ですから、私は学校教育内容の独立性を重視する考えを議会やSNSでも重ねて表明してきたところです。
一方で「教育環境の整備」については、これはまさに首長の仕事であり、予算編成権を駆使して町の教育を良くするために予算措置をし、外部には公言もすべきものだと考えています。
具体的にはこの間、修学旅行費を除いた学用品費等の無償化を進めたことは、自他ともに認める実績です。また、教員の負担軽減のために、両学校には今年度予算の査定において予算要求のあった一般的なコピー機ではなく、帳合機能も付いた高機能な複合機を配置するよう増額査定し導入されたところです。一方、中学校給食の導入も教育環境整備ですが、それを早期に実現しようとすることを、むしろ教育長の側から否定してくるなどということは全く予想外でした。ただし、私としては予算編成側の立場からも公約達成の立場からも積極的に動いてきたことは付言しておきたいと思います。そして、当町の最大の教育環境整備である学校建設にあたっても、公民館や図書館の機能も複合化することで素晴らしい教育環境とするよう、就任当初から教育長にお伝えしてきました。教育長にも大枠では同意頂いてきましたので、教育委員会には職員も手厚く配置し、調査等にかかる費用も多めに予算措置し、首長としては最大限の理解を示してきたところです。
つまり、教育長とは十分に協議・調整を行ってきたところです。それについて、教育委員のみなさまが仮に知らされていないとすれば、それは教育委員と教育長との間のコミュニケーションの問題ですので、私に矛先が向けられる話ではありません。
なお、学校における校則や教師の威圧的言動といった「子どもの権利」に係るような案件は、人権施策を預かる町長部局としても教育委員会を通じて働きかけをしてきました。この間、一部の問題ある校則についても、私から指摘を差し上げ改訂頂いたところです。これは、教育の政治的な中立性の確保とは全く別の文脈であり、憲法に定める基本的人権の考え方からも咎められるような動きではありません。むしろ、教育委員会として不断に学校に働きかけを行っていれば、そもそも町長部局が関与する必要のない案件だったのではないでしょうか?
次に、学校教育以外の社会教育施設については、予算編成権と財産管理の観点から私も方針を申し上げ公言もしてきました。教育委員会の事務負担を軽減するべく移管をご提案してきましたが、未だ為されていない現状では、私が編成した予算の枠内で教育委員会において執行頂くものと考えています。また、社会教育施設の管理については基本的に教育の政治的な中立性の議論が問題となるものとは捉えておりません。
質問事項4
学校建設において、住民の多様な意見を反映させるためこれまで熟議を大切にしてきました。学校建設準備委員会は、最終的に何かを決定する場ではないことはメンバーで確認していますが、熟議を重ねて出来上がった「基本構想・基本計画」の考え方は、今後尊重されるべきものと考えます。議会での町長の発言などを聞いていると、町長の方針とこれまでに積み重ねてきたことに差異があるのではないかと不安を感じてしまいます。そこで質問します。
町長はこれまで度々、学校建設準備委員会の傍聴をされ、傍聴席からの発言をされるなど、積極的に学校建設に関わり、副町長も準備委員会に参加されるなど、町長部局として町民代表の話し合いを重視してくださいました。
今後、基本設計・実施設計と進む中で、町長として何を大切に、どのように学校建設に関わっていく方針なのかを具体的に教えてください。
→本件については、私の方針とこれまでの議論の積み重ねとの間に、どのような差異があるとお考えなのかわからないため、上手くご回答できているかわかりません。
基本的には、「基本構想・基本計画」の策定にあたっても、私からの助言も差し上げた上で策定されており、私は「基本構想・基本計画」に異存はないところです。
ただし、先のご質問にお答えした通り、今後は教育移住を増やしていく必要があります。仮に増えた暁には学年1学級から学年2学級になってしまい、学校が想定数を超えてあふれてしまうことでしょう。そのための冗長性の確保の観点からも、学校には本来よりも多くの床を確保しておく必要があります。だからこそ「充実した公民館機能を併設したい」という発想につながっています。また、近年重視されるようになってきた探求的な学びやProject Based Learningを進める観点では、充実した図書館が求められます。子どもというものは「背伸び」も大事ですので、「内容を絞り込んだ児童書だけではなく、一般図書の広い世界にも触れることができる環境を整えてあげたい」と考えております。学校に図書館機能を置く意義はご理解頂けるはずです。
今後、基本設計・実施設計と進む中で、上記の観点を反映させることは、教育環境整備を司る首長の重要な役割だと認識しています。
質問事項5
9月1日付け毎日新聞に掲載された、「教育長不在の期間ができるのは仕方がない。(その間は)私がアドバイスをするつもり」との記事が掲載されています。そこで質問をします。
この発言は、法制度上の役割を軽視し、教育の専門性を軽んじる発言であり、政治主導で教育をコントロールする姿勢と受け取られかねません。誰に対して、どの件について、どのようなアドバイスをしようとお考えか、教育長不在期間に対するリスクと合わせて教えてください。
→これこそメディアを介した、悪気のない「発言切り取り」の例だと考えます。
私は毎日新聞の本橋記者による取材において、学校建設の文脈でこの発言をしています。本橋記者は録音をとっていましたので、必要なら彼女に頼んで聞き直してみてください。
学校建設において私がアドバイスをすることは、教育長がいようといまいと既に行ってきたことですし、予算が関わる案件ですからむしろ必要なことです。
その観点では、「法制度上の役割を軽視」「教育の専門性を軽んじる」「政治主導で教育をコントロール」といったご懸念を頂くような問題ではありません。
そのような心配をするよりも、今の真鶴町の両学校に次のような心配をしてあげて頂けませんか。
- 学びの個別最適化が実現できているか?
- 学びにつまずきを覚えている子はどうすれば活き活き学べるのか?
- 児童生徒の主体性をどうすれば引き出せるか?
- そのためにも、どのように教員の負担を減らして教員の学び直しの余裕を生むか?
子どもたちに活き活きとした学びを楽しんでもらって、幸せに生きる力をつけてほしい。こうした願いは、私も教育委員も町民のみなさまも共有しているはずです。
対立より対話を。猜疑心より共感を。そんな姿勢で共に歩みたいと考えています。これからもどうぞよろしくお願い致します。
以上

